昨日に引き続き、場末の素寒貧FPと資格試験万年受験生の公園でのお話です。また昼間から飲んでいるようです。
だんな:あんたGWは仕事?
わたし:仕事したいんですけどね(笑)。営業してますけど、お客さんが来ないんで休みでしょうね。
だんな:相変わらず貧乏なんだなぁ。
わたし:Facebookで、カップラーメン食べてる写真とか投稿とかしてますよ(笑)。
だんな:この前話した、先輩。
わたし:この前って?
だんな:ほら、孫の薬学部のお金出したという話だよ。
わたし:あぁ…あれですね。
だんな:先輩は熱心な『聖妙会』の信者らしいんだよ。それで聖妙会系列の『A寺』に先祖代々の寺を移したらしいんだな。ところが息子が、その聖妙会の活動に対して消極的なんだとさ。
わたし:よくある話ですよ。わたしも読んだことありますよ聖妙会の本、「先祖供養があなたを救う」でしたっけね。教祖は蒲生堂亘さん…だったっけな。
だんな:まぁ、そんなことは俺には判らんが、先輩には熱心な信者の若い知人がいるらしくて、その人に墓地の管理と永代供養を任せたいんだとさ。
わたし:ほ~。
だんな:なんかいい方法がないだろうかね。
わたし:ならばこんなのは…
【解説】
まず、考えられるのは、『聖妙会』が生前に金銭の前払いを持って『永代供養』を引き受けてくれるかどうか?というのがあります。
悲しいかな、最近では
- 後継がいない
- 若い世代の信仰心の希薄
- 生活水準の低下による金銭的な面での維持困難
などから『墓じまい』がブームです。そのために多くの宗派では、檀家を失うことで、寺院が没落することへの回避策として、生前における『永代供養』の申し込みを行っているところが多いようです。それならば、「だんな」の相談ケースは問題ないのですが、そういうことを行っていない寺ではどうなるのでしょうか?
考えられるとすると、次の4つですか。
- 墓じまい(残念ながら)
- 知人との『死後事務委任契約』
- 知人への『負担付遺贈』
- 『永代供養信託』(いわゆる民事信託)
1.は、だんなの先輩はしたくないようです。お金もあるようですので。
2.は、どうでしょうか。永代供養費相当の現金を知人に.預託し、その後は知人が必要に応じてA寺に支払いをする。ただ、これですと民法上の『委任契約』は、委任者の死亡により終了するとなってますので、判例上は「死後事務委任契約も有効」というのもありますが、あえてこんな不安定な方法を採る理由もなさそうです。
3.は、一番考えられる方法かもしれません。しかし相続財産として知人に渡ることで、悪い気を起こし自分の懐にしまいこみ、本当に永代供養に使われるかどうか・・・が心配です。
4.は、どうでしょうか。いわゆる『永代供養信託』ということになるのかもしれません。「信託財産」とすることで「永代供養」でしか財産を使えなくなります。
結局はどの方法が良いのか、という明言は避けますが、2.~4.には、ある問題点があります。それは『遺留分減殺請求』です。
息子さんが、この『聖妙会』への信仰に不満があるということなので、永代供養のための財産額が大きくなると遺留分減殺請求権を行使される恐れもないとは言いきれません。
仮に、3.のケースでは生前に知人に贈与(預託)することも考えられますが、税制面で指摘されたりでもしたら面倒なことになりそうです。
4.のケースでは、以前は「信託財産は相続財産から外れているから遺留分減殺請求の対象にはならない」と考えられていました。ただ、これも学問上は(保険の仕組みと同じという根拠で)そう言われているだけであって、本当にそうなのかどうかは、訴えがないだけ(信託契約自体が最近のことで、委託者が死亡していないケースが多く、まだ争訟事案が生まれていないだけ)というのが現実で、むしろ最近は遺留分が発生するという説の方が有力です。
また、ケースによっては遺留分とは別に「財産の持ち戻し」さえ許さないとすると、不都合が生じると反対意見もあります*1。
この『信託財産への遺留分減殺請求』の学問的な話は、簡単な話ではないので、次回以降に譲るとします。
だんな:結局どうすればいいんだよ?あんた。
わたし:・・・「水曜どうでしょう」・・・かねぇ(寒いギャグ)
だんな:えっ、…水曜日がなんだって?
(了)
*1:積極財産が信託財産として切り離されており、相続財産が消極財産のみのケースなど