GW直前、場末の素寒貧FPと資格試験万年受験生…例のふたりが、何やらまた、公園でいつものように、昼間からお酒を片手に駄弁っています。
だんな:(片手に鬼ころし)いまは孫に贈与しても税金がかからないんだってね。
わたし:(酎ハイの缶を開けながら)もしかしたらそれ、教育資金の一括贈与の場合の特例のことですかね。
だんな:教育資金じゃないとダメなんか?
わたし:(感酎ハイを飲みながら)ええ、まあ、そうですね。
だんな:教育資金…ったって言わなきゃ判らんだろう。
わたし:言わなきゃもなにも、引き出すその度に信託銀行で手続きするわけですから、嘘では引き出せませんよ。
だんな:お前さんは馬鹿だなぁ、んなもん信託銀行に預けるからバレるんだよ。自分でどこかに現金を持っておいて、孫に密かに渡す…ってな具合だよ。
わたし:それじゃ巷によくある従来の脱税行為と、差異がないじゃないですか(笑)。
だんな:それもそうだなぁ…?
わたし:というよりも信託銀行がかんでないとこの特例使えないんですよ。
だんな:えっ!どういうことかわからなくなってきたよ。
【解説】
「だんな」が話している孫に贈与しても贈与税がかからない…などというのは、おそらく、『直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税』の話をどこかで聞いて、それを話半分に解釈しての発言と思われます。
これを適用できる主な要件として、以下簡単にまとめると、
- 受贈者が贈与された資金を教育費に充当する
- 2019年3月31日までの間の贈与
- 直系尊属(祖父母・父母)から贈与を受ける
- 受贈者が30歳未満
- 信託銀行等の金融機関で手続きをする
といったところでしょうか。
この要件を満たせば、受贈者1人につき1,500万円(学校等に支払う以外は500万円が上限)までの価額につき贈与税が非課税となる…というものです。
1,500万円の贈与ならば、贈与税なら450万円を超えた金額が課されるので、お得といえばお得です。
だんな:なるほど。そういうことなんだなぁ。でもちょっと待てよあんた。俺の前の会社の先輩で、高齢でもまだ元気に地元地域活動に参加していて…(話が長いので中略)…孫が、昨年春に「聖妙大学の薬学部」に入学したんで教育費を全部負担したといった自慢話をしてたし、半端じゃない金額だって言ってたよ。
わたし:聖妙大学*1…って、金積めば名前書き忘れても誰でも入学できると言われている、東武伊勢坂線・武州杉田駅*2から歩いて20分のところにある、黄金で校舎を塗りたくった大学で、図書館の本が基準を満たしてないということで、行政指導を受けた大学ですよね?
だんな:そんなことは知らんよ。ただ先輩からこんな特例使わんでも、孫に資金あげたからって贈与税を払ったなんて聞いてないよ。多分…私の想像だよ、一回間に自分の子供が入ってるからかな、お金渡すときに。
わたし:そういうことではないのですけどね。
だんな:ああ、そうかすぐに使っちゃうから税金がかからないんだ( *`ω´)。
わたし:それは半分意味合いはあってます(笑)。というのもですね…
【解説】
「だんな」の疑問は、ごもっともです。うちの両親も数年前にこの特例の話題をテレビで流れた際に、「学校行くお金は税金取られるのか?」とか訝しくつぶやいてましたし。
結論から言うと、実はですね、教育費には原則贈与税は課されないのです。
えっ!Σ(゚д゚lll)、それどこに規定があります?…となりますが、実は意外なところにその答えがあります。
出典:国税庁Q&Aの冊子
簡単に言うと『都度贈与』なら税金がかからないけど『一括贈与』なら贈与税が課せられますよ、ということです。
つまり、資金が必要になる度に、その分だけ贈与すれば「贈与税」などかからないのです。一括で前もって贈与だと、本当に教育資金に使っているかどうかなど把握できないからです。だから特例の名称が、『直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税』となっているわけです。
結局、贈与側が30歳時に資金が残っている場合『贈与税』が課税されます。
この特例のメリットとして、言葉は悪いですが「すぐ死ぬ予定がありそうな直系尊属」が申し込む場合にお得と言えます。
あながち「だんな」の解釈は遠からず…ということです。
ここからは私の邪推ですがこの特例にかこつけて結局は、
- 資産を持っている高齢者のあぶり出し
- 都度贈与時に判らないように多めに贈与しているもの封じ込め
が目的だったのではないかと、勝手に感じています。
特例を使う際、信託銀行等に贈与財産があるため、税金を徴収する側からは完全に資金が見える形になっていることに気がつかれるでしょう。
また、この特例の仕組みはあまり知られておりませんが『信託』の仕組を活用しています。冒頭でだんなが『信託銀行なんかに預けないで、自分であげて云々…』と語っていましたが、それでも可能なのです。
その際、信託に近い形になり原則、
- 委託者:直系尊属
- 受託者:信託銀行やその他
- 受益者:孫
- 委託者≠受益者 信託発生時に贈与課税
だったものを特例で、これを信託銀行等にあずけた場合「非課税」にするということに読替えることができるわけです。
だんな:結局は孫には教育資金じゃなかったら贈与税がかかるというわけなんだなぁ
わたし:そのために『遺言代用信託』などのニーズが最近は高まっているわけなんですよ。
だんな:なんだい、それは?
わたし:(空になった酎ハイの缶を覗き込み)今日はもうそろそろ帰りましょうか。「AbemaTV」で将棋の名人戦がやっていて、そろそろ終局の頃だろうと思うので。
だんな:アメーバ???… それ、あんた何チャンネル?
(了)