最近、家族信託がトレンドで猫も杓子も「家族信託」と聞こえてきます(こないか)。
実はこの「家族信託」、登録商標でありまして、正式には民事信託といいます。
80年代「ウオークマン」といえば、耳にイヤホンをしてコンパクトにカセットテープを持ち運んで街でも聴けるものでしたが、あれも正式には「ヘッドフォンステレオ」といいます。「ウオークマン」はソニーの登録商標で、AIWAなどは「カセットボーイ」という商品名がついていました。それと同じことなのです(若い人にはわかりづらいか(^_^;))
民事信託と、信託銀行が展開する商事信託の違いは「業務として反復継続して受託者になれるか否か」の違いです。商事信託は「信託業法」の縛りをうけます。
その違いや商品説明は後日の投稿に譲るとして、今日は民事信託と行政書士業務である農地の権利移動(いわゆる農地法3条許可)のお話。
民事信託は「司法書士」さんが主にメイン業務とされていることが多いです。
理由は簡単で、大概の信託には不動産が絡むことや信託自体に「登記」が必要となるからです。
登記は必ずしも民事信託上の絶対的な要件ではないのですが、登記をしないことには、第三者に民事信託の内容を主張できず、信託の意味がなくなってしまうため、実務上は必ず登記することになります。
では、行政書士の業務である農地の権利移動を信託の内容に盛り込むことで、行政書士の職務の範囲が広がるのでは、めでたしめでたし👏・・・・とは残念ながらいかないのが行政書士のツライところなのです。
第三条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用賃借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。(中略)2 前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。
結論を言いますと、農地は農地として利用する場合には、特殊な場合を除き、信託することができないのです。特殊な場合とは、農業協同組合が絡むもの、という認識でここでは結構です。
農地として利用する場合は、相続まで待たないといけない、という何とも歯がゆいことなのです。
さらに農地の権利移動も、相続は許可が必要ありませんが、遺言書等で農地を「包括遺贈」か「特定遺贈」かの違いで、扱いが変わってきます。前者の場合は許可が必要ありませんが、後者の場合は必要になります。このあたりの話は今回のテーマでなく、書き出すと本ができるくらいになってしまうので(笑)割愛します。
これらにさらに税制も絡んでくるわけで、相続対策・信託設計は慎重にしなければならないことは言うまでもありません。
【今日の結論】
農地は原則信託できない、残念(波田陽区・死語の世界)
おあとがよろしいようで(-_-;)