(前回からの続き)
2,500万円がチャラ(俗語)。素晴らしい制度ですね。終わり・・・・
・・・・では、誰もが使うにきまってます。なぜ使われないのか?
制度の名称をを今一度確認してみましょう。
『相続時精算課税制度』。
実務で知っている方はもとより、勘のいい方ならお気づきでしょう。
そうです、読んで字のごとく『相続時に精算され課税される』のです。
ぎゃあ~!
前回のケースで今一度確認します。
【通常の贈与税】
1年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-110万円=390万円に課税
2年目:1,000万円贈与 ⇒ 贈与税:1,000万円-110万円=890万円に課税
3年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-110万円=390万円に課税
4年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-110万円=390万円に課税
【相続時精算課税制度】
1年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-500万円=0円 課税なし
2年目:1,000万円贈与 ⇒ 贈与税:1,000万円-1,000万円=0円 課税なし
3年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-500万円=0円 課税なし
4年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-500万円=0円 課税なし
1年目~4年目の控除額の合計2,500万円(ここまで課税なし)
⇒⇒⇒【この続きがある】((((;゚Д゚))))
被相続人死亡時、生前に贈与した「2,500万円」を『贈与時の価額』で、相続財産として持ち戻す。2,500万円は相続時課税財産となる。
(結論)課税が繰延べられただけに過ぎない。
(メ・ん・)?
よく判らない?
つまりは、いつ税金の対象になるのか?ってことだけなんです。
例えば、上記の【贈与税を払うケース】では、被相続人死亡時が3年前までであれば、相続財産として、相続課税されます。もっとも課税が『2重取り』にならないように、既に支払った贈与税は、相続税発生時に引くことが出来るだけでなく、場合によっては還付も受けられます。
縁起でもないですが、3年以内に死んでなければ、贈与税を払ったものの、相続財産から切り離されているため、もはや『課税の対象』*1とはなりません。これが、相続時精算課税制度では3年という縛りがなく、贈与した財産の持ち戻しが、死ぬまで何年でもついてくるのです。
違法かどうかは別として、裏でチビチビ、相続人に現金を贈与・・・これが実状でしょう。
閑話休題。
この『相続時精算課税制度』、一回「やります」と言ってしまったら最期、もう暦年課税*2に戻れません。
しかも相続発生時『贈与時の価額』で評価されるのですから、現金2,500万円ならまだいいですが、これが2,500万円相当の不動産で、相続時には価値が300万円くらいしかなくなってた(土地の評価300万円だけで上建物には評価がつかなかった)場合には、課税相続財産として、2,500万円を計上しなければいけないという。踏んだり蹴ったりになります。
逆に言えばそこが、この制度の利点となります。つまり、
『相続発生時、贈与時より大幅に価値が上がると見込まれる財産の贈与』の時に、この制度が生きてくるのです。
今後、利益が大幅に見込める会社の権利株や、上場が予想されるオーナー社長が保有する自社株などがそれにあたります。
しかし、民法上の『相続分』はこれとは別に、相続発生時の「時価」となるので、生前贈与を持ち戻した際にもめることが予想され、非常に狭い範囲でしか恩恵が受けられない制度であると言えます。
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本当に実体経済がそうであれば、使う人も多いでしょうが、土地価格も都市部以外は価格が下げ止まっただけで、取引面で見ると郊外や地方では、『評価額1,000万円、売買価格100万円』というのがざらにあるご時世です。何も一戸建て住宅や新築ビルの価格が上がっているのは、価値が上がっているのではなく人材不足による「建設費用」が上がっているだけ。上建物は築年数であっという間に劣化です。
業績のいい中小企業のオーナー株くらいしか、使い道のないこの『相続時精算課税制度』は、実体経済が悪い今、使われることがあまりないのも頷けます。
(了)