FP事務所のんだら舎のブログ

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【改稿】全財産を『愛犬』に相続させる…って

【2018/6/5 投稿】

 

投稿の期間がずいぶんと開きました。

特に忙しかったというわけでもなく、最近ブログのアクセス数が顕著に減っていて「あまり皆さんのお役に立ててないのかなぁε=(・д・`*)ハァ…」と、モチベーションが下がっていただけなのですが。

 

さて、最近興味深い(失礼)ニュースが飛び込んできました。


dot.asahi.com

 

金で女を抱いた…などの性癖は個人の勝手なのでここでは話題にしませんが、この殺されたとされるNさん、多額の財産があり、報道で漏れてきた話によると、どうやら生前は「犬に全財産をやる」などと話していたそうです。

冗談か本気かは今となっては、知る由もありませんが、仮にそんな遺言書が出てきたとすれば『無効』でしょう。そのときは「相続欠格」にあたらなければ、若い奥様が全財産を相続されます。

でも「犬に全財産を相続」はなぜ無効なのでしょうか?

 

遺言書の不備としては、大きく2つが挙げられます。

  • 『遺言書の成立過程の不備』
  1.  方式違反
  2.  遺言能力を欠く
  3.  意思に瑕疵がある 
  • 『遺言書の内容の不備』 

 

『遺言書の成立過程の不備』

『1.方式違反』とは、「押印がない」「日付がない」「名前がない」などがそれに該当します。誤解を恐れずに言えば「カレンダーの裏の余白を使った遺言書だった」「封をしていなかった」などは、形式的不備にはあたりませんが、遺言内容で不利な相続人から、遺言書の無効を申立てられるなどの覚悟はしておく必要があります。

『2.遺言能力を欠く』とは、「認知症の人が遺言内容を書いている」などがそれに該当します。尤も医師の立会いのもとで書かれた遺言書は有効ではありますが、それを逆手にとって商売にされている士業や医師もいますので、これも利害関係者からの遺言書の無効を申立てられる覚悟はしたほうが良いと思います。

 

biz-journal.jp

 

『3.意思に瑕疵がある』とは、「利害関係者から脅迫されて渋々遺言書を書いた」などがこれに該当します。

 

『遺言書の内容の不備』

これは「公序良俗」や「強行法規」に反する内容などが該当します。公序良俗に反すると言っても「愛人に全財産を遺贈する」は直ちに無効というわけではなく「愛人として継続してもらいたい」といった下心的な意図があった場合などに無効となります。理屈上では「前の妻と別居して15年、離婚してくれないため愛人と現在は15年以上同居状態にある」などでは、遺言書が認められる余地が有るということですが、ハードルは高いので、遺留分だけは妻に残す遺言書を作成することや、そういった場合は、離婚協議を家裁に申し立てるのも方法の一つかもしれません。

ちなみに「強行法規」とは、契約(遺言)当事者の意思に関係なく法律が規制していることをいいます。例えば、遺言の話ではありませんが民事信託(いわゆる家族信託)において「農地」を信託財産にすることができない、などがそれです。

 

「自筆証書遺言」でも構いませんが、「公正証書遺言」であれば、上記の遺言書の不備を一応は考えなくて済むという意味では安心です。とはいえ、必ずしも公正証書遺言が「遺言書として最も効力がある」という意味ではないのでその点はご注意を。詳しくは以前の投稿をご覧下さい。

 

gyouseifp.hatenablog.com

 

最後は随分とまともな話になりましたが、今は遺言書だけではなく先にあげた「民事信託」という方法、遺言の欠点を補う形での「遺言代用信託」というものもあります。

信託においては設定時に『税制』を考慮しておかないと後々面倒なことになります。その点だけはご留意され、各ご家庭の環境に見合う方法にいちばん合った形での対策を考えてください。


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