FP事務所のんだら舎のブログ

たまに脱線アリ。いろいろな情報を楽しく発信していきます!

相続放棄はしたい、保険金は受け取りたい

 被相続人に多額の借金があるので、相続は放棄したい。

 だけど、被相続人には生命保険契約があり、保険金受取人として相続放棄を予定しているその相続人であった場合、どうなるのか?

 

 結論から言いますと、保険金は相続財産ではないため受け取ることができます。

 ただし「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。

 その際、控除は受けられないことになります(500万円×法定相続人)。つまり、

  • 相続税計算時には生命保険金は相続財産とみなす。
  • 相続税計算時の基礎控除の際の法定相続人の数には相続放棄者もカウントする。
  • 生命保険における控除の時は、法定相続人の数の非課税規定は使用できない。

というようになります。

 

 また「限定承認すると保険金が手に入るんですよね」といったような、質問の主旨を理解しがたいお問い合わせをいただきますが、限定承認をしようが、相続放棄をしようが生命保険金は相続財産にはあたりません。

  ちなみに『限定承認』とは、債務を弁済した後に相続財産が残った場合は受け取ることができる方法です。死亡後に債務超過かどうかすぐに判断できないケースで利用されます。

 一見すると便利に見えますが、家裁への手続上、税務上ともにとても面倒くさく*1適用件数はさほど多くありません*2

 ということで、再度結論。相続放棄はしたいけど保険金は受け取りたい…は意外や意外(でもないか)、基本的には何の問題もありません。

 

 学問的にもっと踏み込んだお話を知りたい場合は、以下の投稿も参考にしてください。しかし実務上では生命保険金は相続財産ではないという理解でOKです。

 

gyouseifp.hatenablog.com

*1:相続財産をすべて換価し債務の弁済にあて、残った財産は時価で譲渡したものとみなし準確定申告をする必要がある。しかし限定承認の期間は3ヶ月で、家庭裁判所に提出する書類との整合性で煩雑になり非常に手間がかかる。

*2:2016年では相続放棄が約19万件、限定承認が約750件