FP事務所のんだら舎/行政書士新山文敏事務所 ブログ通信

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有名だけどあまり使われない相続対策 其のⅡ

(前回からの続き)

gyouseifp.hatenablog.com

 

2,500万円がチャラ(俗語)。素晴らしい制度ですね。終わり・・・・

・・・・では、誰もが使うにきまってます。なぜ使われないのか?

 

制度の名称をを今一度確認してみましょう。

『相続時精算課税制度』。

 

実務で知っている方はもとより、勘のいい方ならお気づきでしょう。

そうです、読んで字のごとく『相続時に精算され課税される』のです。

 

ぎゃあ~!

 

前回のケースで今一度確認します。

 

 

【通常の贈与税】

1年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-110万円=390万円に課税

2年目:1,000万円贈与 ⇒  贈与税:1,000万円-110万円=890万円に課税

3年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-110万円=390万円に課税

4年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-110万円=390万円に課税

 

【相続時精算課税制度】

1年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-500万円=0円 課税なし

2年目:1,000万円贈与 ⇒  贈与税:1,000万円-1,000万円=0円 課税なし

3年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-500万円=0円 課税なし

4年目:500万円贈与 ⇒ 贈与税:500万円-500万円=0円 課税なし

1年目~4年目の控除額の合計2,500万円(ここまで課税なし)

  ⇒⇒⇒【この続きがある】((((;゚Д゚))))

 被相続人死亡時、生前に贈与した「2,500万円」を『贈与時の価額』で、相続財産として持ち戻す。2,500万円は相続時課税財産となる。
(結論)課税が繰延べられただけに過ぎない。
 
(メ・ん・)?
よく判らない?
つまりは、いつ税金の対象になるのか?ってことだけなんです。
 
例えば、上記の【贈与税を払うケース】では、被相続人死亡時が3年前までであれば、相続財産として、相続課税されます。もっとも課税が『2重取り』にならないように、既に支払った贈与税は、相続税発生時に引くことが出来るだけでなく、場合によっては還付も受けられます。
縁起でもないですが、3年以内に死んでなければ、贈与税を払ったものの、相続財産から切り離されているため、もはや『課税の対象』*1とはなりません。これが、相続時精算課税制度では3年という縛りがなく、贈与した財産の持ち戻しが、死ぬまで何年でもついてくるのです。
 
違法かどうかは別として、裏でチビチビ、相続人に現金を贈与・・・これが実状でしょう。
 
この『相続時精算課税制度』、一回「やります」と言ってしまったら最期、もう暦年課税*2に戻れません。
 
しかも相続発生時『贈与時の価額』で評価されるのですから、現金2,500万円ならまだいいですが、これが2,500万円相当の不動産で、相続時には価値が300万円くらいしかなくなってた(土地の評価300万円だけで上建物には評価がつかなかった)場合には、課税相続財産として、2,500万円を計上しなければいけないという。踏んだり蹴ったりになります。
 
逆に言えばそこが、この制度の利点となります。つまり、
『相続発生時、贈与時より大幅に価値が上がると見込まれる財産の贈与』の時に、この制度が生きてくるのです。
今後、利益が大幅に見込める会社の権利株や、上場が予想されるオーナー社長が保有する自社株などがそれにあたります。
 
しかし、民法上の『相続分』はこれとは別に、相続発生時の「時価」となるので、生前贈与を持ち戻した際にもめることが予想され、非常に狭い範囲でしか恩恵が受けられない制度であると言えます。
 
アベノミクスが成功して、景気が回復!
本当に実体経済がそうであれば、使う人も多いでしょうが、土地価格も都市部以外は価格が下げ止まっただけで、取引面で見ると郊外や地方では、『評価額1,000万円、売買価格100万円』というのがざらにあるご時世です。何も一戸建て住宅や新築ビルの価格が上がっているのは、価値が上がっているのではなく人材不足による「建設費用」が上がっているだけ。上建物は築年数であっという間に劣化です。
業績のいい中小企業のオーナー株くらいしか、使い道のないこの『相続時精算課税制度』は、実体経済が悪い今、使われることがあまりないのも頷けます。
(了)
 

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*1:民法上の「持戻し」や「遺留分減殺請求権」の対象として遺産分割協議の壇上には上がってくる可能性はあります

*2:一般の贈与税の計算のこと