YAHOOブログ 2016/8/9・2016/8/11 シリーズ投稿
かなり評判が良かった投稿です。
【2016/8/9投稿】
前回の『相続と保険』は、アクセス数からみてかなり好評だったようです。
さて先日、Facebook上にこんな問題がありました。
8パーセントしか当たらなかったという真偽は不明ですが、答えは『1』。
『9』とか『7』とかこじつけて主張している人が多くいることが逆にびっくりです。
6 / 2(1+2)を割り算の形にしなさい。
という問題でいかがですか?そのまま上の数式になるでしょう。
割り算の形にする前で、この分数を解いたらどうですか?『1』でしょ。
ならなかったら、小学校3年生くらいからの知識が欠落しているおそれがあります。
今時の大学生が分数の計算ができないという話はあながち嘘じゃないようです。
世の中にはいかにも曖昧さを醸し出し、数字で嘘をつく方法などいくらでもあります。例えば、
『年商1億円の青年実業家』
よく、マスコミが芸能人のお相手にこういった書き方を好んでしますが、もしかしたら販管費や営業外費用を引いたら、実業家の商売は大赤字がもしれません。
『営業利益率80%』
さも儲かっているような気がしますか、年間の売り上げが50万円しかなく、経費として10万円で書籍や文房具品を買っただけかもしれません。多くの士業の初年度がこれだったりします(自虐)。
etc……
閑話休題。
平成15年、Aは、自己所有の財産全部をYに相続させる公正証書遺言を作成し、同年死亡。法定相続人は子であるXとY。Aは相続開始時、『427,000,000円の建物及び敷地』を含む『432,317,003円』という積極財産と『424,832,503円』という消極財産(債務)を有していた。
遺産全部の権利が、相続開始時直ちにYに承継され、所有権移転登記を了した。
平成16年、Xは遺留分減殺を原因とした、本件不動産の共有持分の所有権移転登記を求めて訴訟を提起。Yは価額弁償の意思表示をした。
【Xの主張】
平成8年判決(全部包括遺贈の事案)で、遺留分侵害額の算定は、
-そのものの特別受益額-その者の実際の相続額+その者が負担すべき相続債務額
としていたはず。であるならば、※可分債務については当然に分割され、
432,317,003円-424,832,503円=7,484,500
7,484,500×1/4(遺留分)=1,871,125円
1,871,125円にその者が負担すべき相続債務額、212,416,252円(債務の半分)
を足した『214,287,377円』が、遺留分侵害額だ!
ということで、今ある不動産「4億幾ら」の半分に私Xは権利がある、つまりは共有持分になるのではないのでしょうか?
※『可分債務』とは、
4人(甲乙丙丁)が債務者なら1人の債務額は4等分されるというもの。1,000万円の債務ならば、債権者は(甲)1人につき、250万円しか請求できないことになる。
ちなみに借金(債務は)相続上、各個人の積極財産の割合での可分債務となる。
なんとなく、Xの主張に丸め込まれそうになります(笑)。
果たして、裁判所の判断は?
つづく
【2016/8/11 投稿】
(前回の続き)
他の弁護士先生のブログなどでも、この判例は紹介されていますので、なにをいまさらという感はありますが、結局何がどうなの?わけわかめ。゚(゚´Д`゚)゚。という方のために(えっいない)、拙い文ですが噛み砕いて書きますと。【Xの主張】平成8年判決(全部包括遺贈の事案)で、遺留分侵害額の算定は、-そのものの特別受益額-その者の実際の相続額+その者が負担すべき相続債務額としていたはず。であるならば、※可分債務については当然に分割され、432,317,003円-424,832,503円=7,484,5007,484,500×1/4(遺留分)=1,871,125円1,871,125円にその者が負担すべき相続債務額、212,416,252円(債務の半分)を足した『214,287,377円』が、遺留分侵害額だ!ということで、今ある不動産「4億幾ら」の半分に私Xは権利がある、つまりは共有持分になるのではないのでしょうか?裁判所の判断は・・・・(画像は裁判の判決イメージであって実際の判決の状況ではありません)Xさん残念無念
ちなみに【Yの主張】
遺言は、相続債務もYが負担するという前提だとすれば、Xの負担する債務など存在せず、
432,317,003円-424,832,503円=7,484,500
7,484,500×1/4(遺留分)=1,871,125円
1,871,125円にとどまると主張。
結局Xの最高裁への上告受理申し立ても、上告棄却で終了。
判旨をダラダラ書いても判りづらいので、ピンポイントでまとめると、
①遺言の趣旨から、当該相続人にすべて相続させるとあるので、特段の事情がない限り、債務も当然すべて承継すると解される。②とはいえ、相続債務についての相続分の指定は、相続債務の債権者の同意なくしてなされたものだから、相続債権者には及ばない。⑤本件は『X』が指定相続分によって相続債務もすべて承継されているから、『Y』には相続債務の額も存在しない。
本判決は、相続債務についても指定があれば相続分の指定があったものとして承認した、学術・実務的にも画期的な判決でした。
この判決によると、求償時においての無資力の問題など、学問的にはまだまだ突っ込みどころが満載ではありますが、それはまたの機会に譲りましょう。
(おわりに)
数字、数式で説明するというのは便利な反面、相手を説得させるために、自分の都合のいいように利用できるところもあります。
皆様も是非、その辺に注意してください。
例えば私のような男が、佐々木希のような女性に声をかけられたら『宗教の勧誘』か『物品販売のそれ』だと思うでしょう。
そのように考えておけば、まず騙されることはないと思います(意味不明)。