FP事務所のんだら舎のブログ

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『遺留分』ってよく言うけれど

YAHOOブログ 2015/7/5~2015/7/6 シリーズ投稿

 

【2015/7/5 投稿分】

今回の話は、本年度の行政書士受験を考えている方にも、役立つお話。
 
よく、ミステリー小説なんか読むと、だいたい殺されるのは資産家で、それも見も知らぬ人に「財産全部あげる」のような巫山戯た遺言書が出てきて、納得できないと叫んだ挙句・・・結局その人も殺されて・・・・と。
 
1980年代の多くの作品には遺留分」についての認識があまりなかった所為か、本妻とか、兄弟姉妹が出てきて、次の殺人に発展、犯人は誰か?的なものが多かったと感じます(西村京太郎の読みすぎ)。
 
今では、「遺留分」、結構知られていると思います。
 
兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分権利者として、贈与・遺贈に、遺留分の減殺請求をすることができます(民法1028条)。
 
「兄弟姉妹以外の相続人」だからといって、「俺はあかの他人だけど遺言書に相続させるって、あったから権利者だ!」というのは、ナンセンス。
ここでいう「兄弟姉妹以外の相続人」というのは、
 
法定(法で定めた)相続人のなかで、兄弟姉妹はナシよ」という意味です。
 
あかの他人は、遺言書に「相続させる」と書いてあっても「遺贈」または「死因贈与」です。
 
この2つどう違うの?と、先日も質問受けましたが、
「遺贈」は、片務契約
死因贈与」は双務契約、ということです。
 
まあ、簡単に言うと、
 
遺言書で「愛人A子に家をやる」と書けば、遺贈(一方的)。
被相続人の死後、愛人がいらないといえば終わり。
 
愛人と面向かって「私が死んだらA子に家をあげることを約束します」
と書いてハンコでも押しあい目出度く死ねば、死因贈与ということです。
 
 
 
遺留分減殺請求権」という格好いい響き(?)ですが、一般的に実務の世界では「請求権」でなく「形成権」という扱いになってます。
 
なんで?って言われて判例がそう言ってる」では、身も蓋もないのですが、難しい話になるので、簡単に言えば、法律の世界では、
 
「請求権」だと、「裁判所に申し立ててなきゃダメよ」ということになり、
「形成権」だと、「意思表示があればいいよ」
 
という違いがある程度に認識で結構です。
 
またこの形成権は「物権」なのか、価額弁償を認めた条文を根拠とした「債権」なのかで、いろいろまあこれも議論があるのですが、通説・判例では物権説、「行使によって目的物上の権利が当然に遺留分権利者に帰属する」としています。
 
そして、意外にも(そうでもないか遺留分には時効があるので注意。
「知ってから1年・相続開始から10年」と覚えておきましょう。
 
遺言書もなく、単に法定相続人間で、遺産分割協議が決裂している場合、遺留分云々と、ごっちゃになりがちですが、この場合はあくまで「遺産分割」でもめているので遺留分とは異なります。
 
さて次回は、この「遺留分減殺請求権」は他人に譲渡できるの?
という点で書き込みたいと思います。
 
 
つづく
 
 
 
【2015/7/6 投稿分】
 
遺留分減殺請求権」のようなものは「一身専属権」と言われています。
ほかには、「慰謝料請求権」も一身専属権です。
 
一身専属権」とは、通常他の者に移転しない性質を持ち、譲渡や相続の対象にならず、差押えすることもできないという権利のことです。

しかしこんな判例の判旨があるのです。

遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、これを第三者に譲渡するなど、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位の目的とすることができないと解するのが相当である」

(メ・ん・)?
あれ遺留分減殺請求権って、譲渡できるの?
 
頭が錯乱してきました

学説などで、解釈はいろいろありますが、この判例簡単に言うと、
 
遺留分減殺請求権は権利者が「遺留分を君にあげよう」と言えば第三者も権利行使が可能となる(つまり譲渡OK)だけど、権利者が「遺留分行使する気はありません」ということなら、第三者は権利を譲渡されないものとされ、「代わりに俺に遺留分をよこせ」と言えない、ということです。
 
この判例のケースは、相続人のひとりが債権者から金銭を借りていて、その相続人が無資力で、しかも、相続分も少ないのに遺留分減殺請求もしないことを債権者が、「ふざけんな、このやろう!行使して金返せよ」と裁判上で申し立てた(法律上では債権者代位権という)ケースなのです。
 
裁判所もどう決着をつけようか困ったのでしょうか?
 
なぜなら、 民法1031条に遺留分権利者およびその承継人」とある(遺留分権利者は承継できると解せる)のです。
 
一身専属権は譲渡できない・・・・
いやあ困った、そこで、えい!とその矛盾を回避するために、、
 
遺留分権利者が、これを第三者に譲渡するなど、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き」を加えたのではないか、というわけです。
 
つまり、法律と矛盾しているので苦肉の策を取ったということですかね。
 
このあたりのあやふやさが、学者の研究の楽しみなんでしょうが、一般people(またも死語)には、迷惑な話ですよね
 
 
ちなみに「慰謝料請求権の相続性」についても面白い話があるので、いつか紹介したいと思います